JAIST修士に進学予定です

はじめに

このエントリーは、社会人学生 Advent Calendar 2020の14日目です。

アドベントカレンダーで皆さんが書かれているように、社会人博士の記事は多くありますが、修士・特に理工系についてはまだ少なく、自分も情報収集に苦労したため自分の体験を残しておきたいと思います。

このためにブログ開設したほどの初心者ですが、どうぞ良しなに。

自己紹介

先日、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の院試に合格し、2021年4月に博士前期課程に入学予定です。四年生大学の工学部の出身で、卒業後の進路は8〜9割が大学院進学という環境でした。在学中から「就職するには修士は出ないと」のような風潮があり、自分も一度はその気でしたが、いろいろな事情で就職しました。学士卒だと技術系の仕事はつけないとも言われていたけれど、バリバリのR&Dではないとはいえ一応技術系です。

動機

就職してからやり始めた分野が面白く、気づいたら参考書や論文、技術資料を読み漁っているような状態でした。こんなに夢中になったのは人生で初めての経験で、もっと深く知りたい、研究してみたいと思うのは自然な流れだったと思います。

博士か修士

社会人で大学院にといえば、社会人ドクターかMBA等の専門職大学院を指す事が多いのではないかと思います。研究しに行きたいのであれば尚更前者。

現在は多くの大学院が社会人の入学を受け付けていますが、その多くは博士後期課程の話。博士課程の入学資格は文部科学省によると、以下の7つが該当します。

  1. 修士の学位や専門職学位を有する者(法第102条第1項)
  2. 外国において、修士の学位や専門職学位に相当する学位を授与された者(施行規則第156条第1号)
  3. 外国の学校が行う通信教育を我が国において履修し、修士の学位や専門職学位に相当する学位を授与された者(施行規則第156条第2号)
  4. 我が国において、外国の大学院相当として指定した外国の学校の課程(文部科学大臣指定外国大学(大学院相当)日本校)を修了し、修士の学位や専門職学位に相当する学位を授与された者(施行規則第156条第3号)
  5. 国際連合大学の課程を修了し、修士の学位に相当する学位を授与された者(施行規則第156条第4号)
  6. 大学等を卒業し、大学、研究所等において2年以上研究に従事した者で、大学院において、修士の学位を有する者と同等の学力があると認めた者(平成元年文部省告示第118号)
  7. 大学院において個別の入学資格審査により認めた24歳以上の者(施行規則第156条第7号)

国内大学の学士卒が入学資格を得るには6か7ですが、この「修士課程卒業と同等以上の能力」というのがよくわからない。大学ごとに個別の審査を設けており、その基準は公になっていないケースがほとんどです。査読付き論文や学会での発表経験などの実績、大学や研究機関などでの実務経験が該当するようですが、自分はあいにく普段の業務でこういった貢献を求められていないので、このまま漫然と仕事をしていても外にアピールできる実績ができないのは明らかでした。

また、あわよくば入学資格の審査に通って入学できたとしても、実績も経験もなく、自分が研究に向いてるのかわからないまま挑戦し、途中でドロップアウトしてしまうリスクを飲み込めませんでした。

ということで修士課程です。

学校選び

フルタイムで働いたまま修士課程に進もうとすると、ボトルネックになるのは座学の単位です。 修士課程では大学院によって多少差はあるものの、20単位程度の座学の単位が修了要件になります。 ほとんどの大学院の講義は平日昼間に開講しているので、よほど理解がある企業にいなければこの時点でほとんどが選択肢から外れます。

加えて理工系は修論のテーマに実験が必要なことも多いので、物理的に通える範囲に使える設備があるかどうかも重要だったりします。幸い自分はテーマ的に大丈夫そうだ。 社会人コースがある修士課程にビジネス系と情報系が多いのは、上記の理由もありそうです。講義やゼミで完結できる分野は、他と比べて制度導入のハードルが低いのかな。

そんなこんなで、学校選びの条件は以下の通りです。

  • やりたい分野の研究室がある(一番重要)
  • 授業が平日夜・土日に開講
  • 学費の安い国公立がいい(経済的に苦しいので)
  • フルタイムで働きながら通える(経済的に苦しいので)

これらを満たす大学院は、自分が調べる範囲ではJAISTだけでした。

JAISTの社会人コースは知識科学系と情報科学系の2つあり、大枠としてはそれぞれビジネス系と情報系なのですが、その中に様々な分野の先生方がいらっしゃいます。これが功を奏して、自分の研究したい分野の研究室が見つかりました。

費用面のやりくりも非常に重要で、私はまだ社会人数年目のぺーぺーなので、一回会社をやめて大学院にいったり私立に通えるほどの経済的余裕がありません。JAISTの学費は年額54万で、かなり厳しいですがギリギリ走りながら払っていける範囲と判断しました。2年の学費で3年いていい制度もあり助かる。

入試当日

JAISTの院試は筆記試験はなく、事前に提出の小論文(研究計画)と面接・口頭諮問です。今年はオンラインでの実施で、自宅から院試を受験するという貴重な経験ができました笑 提出してある小論文について、7分の発表と23分の口頭試問。当日にどうこうというよりも、事前に配属希望の先生とある程度内容を詰めており、それを遂行するだけの基礎能力があるかが判断基準なのかと思っていますが、実のところはよくわからない。

まとめ

「(理工系で)就職するなら修士は出といた方がいい」は、社会に出た後の選択肢の少なさを考えると正しかったのかもしれません。 一方で、自分のように社会人になってから興味があるのものに出会えたり、卒業した専攻とは違う方向性の専門性を身につけたくなった等、学び直したいケースは実は多いんじゃないかと思いますが、選択肢が少なく機会損失してしまっている人も多いんじゃないでしょうか。 学び直しが推進されている昨今ですので、今後はもっと社会人の修士進学について国や大学の制度、企業のサポートが充実してくれば良いなと思います。